大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和22(れ)19 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人榊純義平井光一上告趣意書は原判決ハ被告人ノ自白ガ唯一ノ犯罪ノ証拠デ

アルニ拘ラズソレヲ証拠トシテ断罪シタ違法ガアル。原判決認定ノ事実中第二ノ(

一)ニ依ルトAハ同年十二月二十七日云々中略B方デ開帳サレタ賭場ニ赴キ賭客ノ

Cヲ戸外ニ呼出シタ上同人ニ対シ「刀ヲカタニ千円貰ヒタイ」ト無理ナ要求ヲ持出

シ、同人ニ於テソノ要求ヲ容レナケレバドンナ危害ヲ加ヘルカモ知レナイト思ハセ

ル様ナ態度ニ出テ同人ヲ脅迫シソノタメ畏怖ノ念ニ駆ラレタ同人カラ現金千円ヲソ

ノ場デ交付サセテ之レヲ喝取シト判示シテ居ルケレドモ右被害者タルCニ対スル司

法警察官ノ聴取書中ニ依ルト、前略昭和二十一年十月二十七日午後二時頃カト思ヒ

マス。私ハa町b番地Bト云フ知合ヒニ遊ビニ参リマシテ玄関ヨリ良ク知ツテ居リ

マス関係上無断デ上リマスト玄関ノ三畳ノ間ニ前ニ申上ゲマシタ新宿ノDトカ云フ

男ト他ノ一人ガ居リマシテ私ガ入ツテ行キマスト家ノ人ハ奥ノ間ニ居リマシテ私ノ

方ヲ見マスノデ私ハ二人ニ向ツテ御用デスカト聞キマスト他ノ一人ガ俺ハ新宿ノD

ト云フ者ダガ明日此処ニ風天ノEト云フ男ガ喧嘩ニ来ルカラソレヲ俺ガ聞イタカラ

話ヲ付ケテヤルト云ヒマスノで私ハコンナ事ヲ家ノ者ニ聞カセテハ良クナイト思ツ

テ一寸外ニ出テクレト云ヒ二人ノ男ヲ同家カラ十五間位離レタ処ノ人通リノ少ナイ

畑ノ中マデ連レテ参リマシタ。ソノ時Dト云フ男トソノ男ニツイテ来タ男名前ハ知

リマセンガンノ男ハ左手ニ長サ二尺位ノ日本刀ノ様ナモノヲ持ツテ居リマシタノデ

気持ハ良クアリマセンデシタガマサカ真昼間私ニソノ日本刀デ傷ヲ付ケル様ナ事ハ

ナイトハ思ツテ居リマシタガ兎ニ角畑ノ中ニ入ツテ行ツテソレデハドンナ理由ダカ

知レナイガEノ来ナイ様ニシテ貰イタイト云ヒマストDト云フ男ハ私ニ向ツテEノ

来ナイ様ニスルカラ運動資金ヲ壱干円クレト云ヒマスノデ云々中略現金壱千円也手

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渡ストDト云フ男ハ日本刀ヲカタニ置イテ行クト云ヒマシタガ私ハソンナモノハイ

ラナイト云ヒマストソノ儘帰リマシタ云々旨ノ記載ニ依レバ原審認定ノ第二ノ(一)

ノ事実ノ様ナコトハ全然認メラレナイ。刀ヲカタニ千円貰ヒタイト脅迫シソノ要求

ヲ容レナケレバドンナ危害ヲ加ヘルカモ知レナイト思ハセル様ナ態度ニ出タトハ認

メラレナイバカリデナク原判決ニヨレバCヲ被告人ガ戸外ニ呼出シタトアルケレド

モ事実ハB方ニ偶然来合ハセタCノ誘ヒニ依ツテ十五町位離レタ畑中ニ同行シタノ

デアリ被告人等ハ日本刀ヲ持ツテハ居タガマサカ真昼間ソノ日本刀デCニ傷ヲ付ケ

ル様ナ事ハナイト思ツテ安心シテ居タノデアル。之レハEヲ来ナイ様ニシテヤル運

動資金トシテCハ壱千円ノ金ヲ出シタノデアツテ原審認定ノ様ニ喝取サレタモノト

ハ到底認メルコトハ出来ナイ。タトヘ昭和二十二年東京高等検察庁押第一〇八号ノ

一ガ存在シタトシテモソノ日本刀ヲ被告人等ガ携帯シタコトハ何等脅威ヲ与ヘテ居

ナイシCガ現金千円ヲ手渡シタ後被告人等ソレヲ質ニ置イテ行コウトシタ点カラ云

ツテモ此ノ日本刀ハCヲ威嚇スルタメ携帯シタモノトハ認メラレズモトモト之ヲ質

ニ金ヲ借リルタメ携帯シタノデアツテ原審認定ノ第二ノ(一)ノ事実ノ証拠ニ採レ

ナイコトハCノ供述ニヨリ自明ノ理デアル。即チコノ場合外ニ証拠トナルモノハナ

イカラ原審ハ被告人ノ供述ヲ以テ断罪ノ証拠ニ供シタコトハ明カデアル。被告人ニ

不利ナル唯一ノ証拠ガ被告人ノ自白デアルノニ拘ラズ之レヲ採ツテ罪証ニ供シタ原

審ハ違法ノ極ヲ敢テシタモノデアルカラ何卒原判決ヲ破毀シテ事実審理開始決定ノ

御裁判ヲ賜リ度ク右上告趣意書提出ニ及ブ次第デアルと云うのであるが日本国憲法

の施行に伴ふ刑事訴訟法の応急的措置に関する法律第十条第三項の規定は公判廷外

の自白が被告人の不利益な唯一の証拠である場合にこれにより有罪とされ又は刑罰

を科せられないという趣旨であつて公判廷の自白を包含しないと解すべきである。

けだし被告人が公判廷外で自白した場合にその自白が被告人の不利益な唯一の証拠

であつて他に何等その自白を補強すべき証拠のないに拘はらずその自白のみによつ

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て有罪とせられることは被告人にとつて甚だ危険であると云わなければならない。

従つて公判廷外の自白を有罪の証拠として採用するにはこれを補強すべき他の証拠

を必要とする法則を確立することが基本的人権の擁護の上から極めて緊要なことで

あつて日本国憲法第三十八条第三項及び前記応急措置に関する法律第十条第三項の

規定はこの趣旨を宣示しておるものである。これに反して公判廷においては被告人

は身体の拘束を受けることなく又陳述する義務もないのであるから自己に不利益な

供述を強制されることなく全く自由に供述し得る立場に置かれておるのである。従

つて公判廷で被告人が自白した場合は自白の外に補強証拠を必要とする法則の適用

がないと解しても毫も基本的人権の擁護に欠ぐるところはないのである。本件にお

いて原審は原判示第二の(一)の事実を認定するにあたり被告人の原審公判廷にお

ける自白と犯罪供用物件たる日本刀一振の存在を証拠としておることは所論の通り

であるが前記説明の如く被告人の公判廷の自白が唯一の証拠であつてもこれを証拠

として有罪の判決をすることができるのであるから原判決には所論のような違法な

く論旨は理由がない。

以上説明の理由により本件上告は理由がないから刑事訴訟法第四百四十六条によ

り主文の如く判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見によるものである。

検察官小幡勇三郎関与

昭和二十二年十一月二十一日

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 塚 崎 直 義

裁判官 霜 山 精 一

裁判官 栗 山 茂

裁判官 小 谷 勝 重

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裁判官 藤 田 八 郎

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